青焼き図面しかない図面・装置をCADで再現
2025.8.7
防衛関連の特殊装置や、数十年前に製造された産業機械など、長きにわたり稼働する設備は数多く存在します。これらの設備の保全や改修、部品交換の際に、設計・開発担当者の皆様を悩ませるのが図面の陳腐化という課題です。特に、CADが普及する以前の設計資産は、青焼き図面という形でしか残っていないケースが少なくありません。紙の図面は経年劣化や紛失のリスクが常に付きまとい、なによりも現代の製造プロセスとの連携が困難です。しかし、貴重な設計資産の活用を諦める必要はありません。
そもそも青焼き図面とはなにか?
若い世代の設計者には馴染みが薄いかもしれませんが、青焼き図面(ジアゾ式複写)とは、かつて図面複製の主流だった手法です。原図となるトレーシングペーパーに描かれた図面を、感光紙に焼き付けて複製したもので、青い紙に白い線(青地白焼き)、あるいは白い紙に青い線(白地青焼き)で描かれます。手書きが基本であった時代、これは非常に画期的な複製技術でした。しかし、その性質上、①複製のたびに精度が僅かに劣化する、②日光や湿気で退色・劣化しやすい、③変更や修正が手作業となり多大な工数がかかる、といった大きな弱点を抱えています。
青焼き図面・現物からCADデータへ
たとえ手元にある資料が、色褪せた一枚の青焼き図面や図面すらない「現物」だけであっても、それを現代のデジタルデータへと甦らせることは十分に可能です。
①青焼き図面からのCAD化
高解像度スキャナーで図面をデジタル画像として取り込み、その画像を下絵にして、2Dまたは3DのCADソフトウェア上で正確にトレース(再作図)します。寸法や公差を再評価し、より合理的なデータとして再構築します。
②現物からのCAD化(リバースエンジニアリング)
3Dスキャナーや各種測定器を用いて、現物の形状を精密に測定します。その測定データを基に、3D CADモデルを構築します。これにより、図面が存在しない装置でも、完璧なデジタルツインを創り出すことができます。
CADデータへの変革がもたらす効果
古い設計資産をCADデータ化することは、単なる図面の電子保存以上の、計り知れない価値を生み出します。当社では、dxf,dwgなどの2DのCADにも対応していますし、一般的な3Dの拡張子にも対応しております。
①設計変更・改良の圧倒的な効率化
CADデータであれば、部品の一部変更や改良が迅速かつ容易に行えます。さらに、る強度・熱・流体解析などを実施し、性能向上や軽量化といった、現代的な要求を取り入れた改良設計も可能になります。
②製造プロセスとのシームレスな連携
作成したCADデータは、NC加工機や3Dプリンターといった現代の工作機械に直接受け渡すことができます。これにより、部品の試作や再生産がスピーディかつ高精度に実現します。協力会社への部品発注も、データを送るだけで完結します。
③技術資産の永続的な継承
劣化する紙媒体から、劣化しないデジタルデータへと変換することで、企業の貴重な設計思想や技術的ノウハウを、半永久的に、かつ寸分の狂いもなく保管できます。これは、ベテラン技術者からの技術継承という観点でも、極めて重要な取り組みです。